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稲見一良「ダブルオー・バック」

今年は稲見一良(いなみいつら)さんの本がマイブームです。買える本は買いました。以前ブックオフで購入の「セントメリーのリボン」そして「猟犬探偵」。そして店頭在庫しかもうないだろうとネット上で言われていた「ソー・ザップ!」を丸善の在庫検索で探し当て、買いに走ったという(笑)。「男は旗」は当時まだ残っていたようだったんですが、レビューを読んで、ちょっと買うのは見送り。

さて今回取り上げる「ダブルオー・バック」は、単行本はもちろん、文庫本も絶版であり、図書館から借りて読みました。
ある銃をめぐる4編の短編小説から成る物語。作者の稲見一良さんが肝臓ガンを宣告されてから本格的に小説に取り組んだ第一作です。

まず、第一話「オープン・シーズン」。狩猟解禁日を指すタイトルですが、ハードボイルドの文体にやられました。こういう話、好きなんですよ。第一話と二話の間にある「断章」という名の幕間も効果的。第一話の男の末路がさらりと語られて、愛用の銃が人手に渡ったことが示唆されます。

そして第二話「斧」。冬休みに山で暮らす父を訪ねる息子の物語ですが、猟の描写、そして山の暮らしの描写がとにかく美しく、そして後半の熊との格闘で物語は一気にクライマックスへ。この畳みかけるような急展開にページをめくる手ももどかしく、早く先を読みたかった! 個人的には一番好きな話でした。
これもまた「断章」で後日談が語られます。

ここまで読んで、この銃は死を招く銃なのか?と思いましたが、第三話「アーリィタイムス・ドリーム」では趣向が変わって、銃の持ち主は小悪党。ハードボイルドに憧れる夢見がちなマスターの痛快劇によって、銃はマスターの手に。銃を軸にしてまわる話ではなく、小道具として使われているような印象でした。そしてやはり「断章」で銃の顛末が語られ、この顛末が上手く第四話に絡んできます。

第四話「銃執るものの掟」は、肝臓ガンとなり余命幾ばくもない老人と組織に裏切られた異国の者との、山での遭遇を描いた一品。第一話では誉れ高かった銃も、今や正規の登録のない闇の銃となり、とある因果で異国の逃亡者の手に。そして銃の最期が描かれます。生きることに執着する老人と異国の逃亡者、そして凶器となり最期を遂げる銃との対比が素晴らしいです。

こんな素晴らしい一冊が、もう絶版本とは…。同時期に発売されたと思われる泡坂妻夫さんの「しあわせの書 迷探偵ヨギガンジーの心霊術」はまだ本屋で買えるのに!(今年買ったので・笑)
新潮社さんあたりから稲見一良全集が出ないものでしょうか。亡くなったのが94年とのことなので、もうダメかなあ…。

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